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(注:ファイルサイズを小さくするためにJPEG化し、画質を落としてあります)
スコア+パート譜セット
【編成】
木管六重奏(1st Flute/Piccolo, 2nd Flute, 2 Clarinet, Oboe, Bassoon)
【難易度】5.上級者向き
【原曲】Jeux d'eau / Maurice Ravel
【編曲】
遠藤雄一 (Yuichi Endo)
【作者webサイト】
https://igrecmusique.com/
【演奏時間】約6分
「水の音、そして、噴水、滝、小川のせせらぎの発する音楽的な音からインスピレーションを得た」(自伝的素描より)
19世紀に於ける、特に後期ロマン派の所謂超絶技巧とは一線を画し、20世紀モダニズムでは、高度な演奏技術を単なる名人芸の披露に留めず、純粋な音楽表現のための一要素として扱う傾向が強まっていく音楽史的特徴があるように思われる。近代フランスを代表する作曲家の一人であるラヴェルも、そのような傾向を示しており、例えば、「夜のガスパール」では、難曲の代名詞的存在であったバラキレフの「イスラメイ」よりも難しい曲を書くと宣言した上で、音楽的内容の非常に充実した作品を作曲している。
他方、作編曲家にあっては、「個々の楽器の特性を捉え、その特性を活かして作曲するべきである」といった価値観が普遍化しているが、その事を肯定した上で、音楽的内容に満ち溢れた作品であるならば、「その作品の音楽的内容を抽出する事で、あらゆる編成からあらゆる編成(本質的には、減衰音から持続音、或いはその逆)への編曲が可能である」とする論理も首肯されるべきではないだろうか。実際、ラヴェルはピアノ・ソロ版と管弦楽版の両方が存在する作品を多く残している。
しかしながら、「水の戯れ」に関してはオケ版を書かなかった。「私の作曲家としてのキャリアに於いて、人々が言及する事を望んだ全てのピアニスティックな新しさの始まりである」とラヴェル自身、「水の戯れ」について自伝的素描で述べていることから、飽くまでピアニスティックな技巧のための作品と捉えていたのだろうと推測されるが、逆に言えば、ピアニスティックな技巧がより深い音楽表現を可能にしているとも考えられる。だが、ピアノでなければ水を表現出来ないとは思えない。仮令、黒鍵のグリッサンドによる急降下が「滝の発する音楽的な音」にインスパイアされたものであったとしても、アプローチの仕方を替えれば良いのであって、編曲版も可能であったはずである。作曲者自身の編曲が存在しないことが惜しまれる。
編曲版解説
ピアノやハープといった減衰音を一切使わない事を条件として、編曲を進めながら望む音色や必要と思われる楽器を揃えていくうちに、フルート(第1奏者はピッコロ持ち替え)とクラリネットが2本ずつ、そして、オーボエとファゴットという六重奏に纏まりました。下手から、フルートI(ピッコロ)、フルートII、オーボエ、ファゴット、クラリネットI、クラリネットII といった配置を想定して編曲していますが、 強要するものではありません。元々、原曲であるピアノ版が難曲であり、飽くまで高度な技術を要求する作品を提供することを前提として室内楽化に挑みましたが、楽器によって難易度が異なります。フルートが最も難易度が高く、次いでクラリネット、オーボエと続き、ファゴットが最も容易です。強弱に関しては、ピアノと木管楽器ではダイナミック・レンジが異なるかと思われますが、原曲スコアに表記されているものを基本とし、又、それだけでは不明確なので、補足的に適当と思われるものを書き足しました。アーティキュレーションについても同様ですが、マルトレをアクセントに変えるなど、変更している箇所はあります。
注釈としては、原曲では48小節目でピアノの最低音である<ラ>が奏されますが、この音は、シェエラザード序曲ピアノ連弾版での <gong> の指示の例のように、銅鑼の音として扱っているように思われ、前後関係や和声的見地からは、作曲者の欲した音は<#ソ>ではないかと思われます。ピアノ(ベーゼンドルファー以外の標準的なピアノ)の音域外の音であるため、<ラ>を代用したのでしょう。ファゴットの音域ではラは不可能であり、又、和声のバス音を担当する関係上<#ソ>に変えました。<ラ>をバス音とする事は、形式上考えにくく、且つ聴感上に於いても不適切と思われます。
次に、原曲スコアの72小節目は、コンチェルトに於けるカデンツァのような箇所であって、一貫して小さい音符が拍数を超えて延々と書かれています。アンサンブルで演奏する以上、原曲スコアのままでは不都合であると思われたので、適切と思われるところに小節線を引きました。
スコア冒頭に書いてある、アンリ・ド・レニエによる詩の断片は、原曲スコアに題辞として掲げられてあるもので、「水にくすぐられ、笑みをたたえる河の神」といった意味になります。
邦題の「水の戯れ」は意訳です。原題は、<Jeux d'eau>。「噴水」の意味で、jeu が多義語であって、「遊び」「ゲーム」「冗談」などの意味となるので、「水の戯れ」となったのかと思われます。因みに英題は、<Water Games>等と訳されています。
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